プロスペクト理論

読み方: ぷろすぺくとりろん
英語: Prospect theory
分類: 行動経済学

プロスペクト理論は、不確実性下での損得の絡む意思決定において、人が既知の確率を伴う選択肢の間でどのように意思決定をするかを記述するモデルをいいます。元々は、心理学の理論として構築され、その後、経済学の新分野を切り開き、今日の行動経済学の基礎を築きあげました。

ここでは、資産運用やマーケティングなどで用いられる「プロスペクト理論」について、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

プロスペクト理論の概要

プロスペクト理論は、期待効用理論のアノマリーを克服する、心理学に基づく現実的な理論として、ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman:米国の心理学者)とエイモス・トベルスキー(Amos Tversky:イスラエルの心理学者)によって展開されたもので、1979年に発表された論文のタイトル名に由来します。

具体的には、見込みや期待という意味の「Prospect(プロスペクト)」の概念を導入し、何らかの選択の結果として得られる利益もしくは被る損害、およびそれらの確率が、既知の状況下において、人がどのような選択をするかを記述するモデルとなっています。また、今日では、行動経済学における最も代表的な理論の一つとしても知られています。

ちなみに、ダニエル・カーネマンは心理学者でしたが、この理論を経済活動の分野にも応用し、経済学に新分野(行動経済学)を切り開いた功績により、2002年にノーベル経済学賞を受賞しました(エイモス・トベルスキーは1996年に死去。もし生きていれば同時受賞したとのこと)。

プロスペクト理論の概念と活用

プロスペクト理論は、人は利益を得る局面では「確実に手に入れること」を優先し、逆に人は損失を被る局面では「最大限に回避すること」を優先する傾向があるという行動心理を表したものです。もっと簡単に言えば、利益と損失がまったく同じだった場合でも、人は損失の方を大きく感じてしまう傾向があります。

資産運用におけるプロスペクト理論

プロスペクト理論は、資産運用においては、従来(昔)の投資理論では説明のつかなかった投資家の判断行動が、現実に即した形で解明されました。

◎投資家は、収益よりも損失の方に敏感に反応し、収益(利益)が出ている場合は、損失回避的な利益確定を行う傾向がある。

◎投資家は、損失が出ている場合は、それを何とか取り戻そうとして、より大きなリスクを取るような投資判断を行う傾向がある。ちなみに、この行動は、ギャンブルの場合でも当てはまる。

マーケティングにおけるプロスペクト理論

プロスペクト理論は、マーケティングにおいては、カスタマー心理(人の損失回避や利益獲得)に着目して、例えば、以下のように利用されています。

◎「今だけ2割引き」や「今だけ入会金無料」というように、期間限定キャンペーンを実施し、これを逃すと損するような印象を与える。

◎「満足いかなければ全額返金保証」や「30日間無料お試し」というように、リスクリバーサルなキャンペーンを実施し、利得を上手く認識させることで、購入の敷居を下げる。

◎「50人に1人購入額無料キャンペーン」というように、確率的に当りそうなキャンペーンを実施し、自分が無料になるかもという利得で購入を促進する。

◎「100個限定販売」や「3日間限定販売」というように、商品の希少性をアピールするキャンペーンを実施し、買えないかもという損失を認識させ、商品の購入を促進する。

◎「今月末がポイントの有効期限です」というように、顧客にポイントの有効期限を通知し、ポイントが無効になることによる損失を認識させ、商品やサービスの購入・利用を促進する。

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