総損失吸収能力(TLAC)
読み方: | そうそんしつきゅうしゅうのうりょく |
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英語: | Total loss-absorption capacity(TLAC) |
分類: | 金融規制 |
総損失吸収能力(TLAC)は、金融安定理事会(FSB)が制定した資本規制の基準をいいます。
リーマン・ショックで課題となった大手銀行の「TBTF(大き過ぎてつぶせない)」という問題に対処するために、大手銀行が経営難に陥った際に税金(公的資金)で救済しなくてもすむように、社債権者等にも損失を負担させ、全体として十分な資本バッファーを確保させるものとなっています。
一般にTLACは、国際的な大手銀行に課す健全性基準であり、バーゼル委員会が設定してきた銀行の経営基盤を担保する自己資本基準である「バーゼル規制」とは別ものです。その特徴は、従来のバーゼル規制の自己資本に加え、債権者に元本の削減・免除を要求できる債券や預金保険の対象外の預金を含ませる点です。
これにより、ある銀行が危機に陥った際に公的資金を投入せずに、資金を提供した債権者や預金者などにも負担(損失)を負わせることによって破綻させるという仕組みになっています。
なお、本規制の対象となるのは、世界の金融システムに影響を及ぼす各国の大手銀行30行で、日本では、三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループの3メガバンクが対象となります。
<総損失吸収能力(TLAC)の経緯>
◎2014年11月にFSBは、破綻時に損失を吸収するための新たな資金的対応の枠組みを発案し、最低でも自己資本規制と同規模で保有するよう盛り込んだ市中協議文書を公表し、その中で新しい規制概念として大手銀行が保有するべき「総損失吸収能力(TLAC)」という項目を盛り込んだ。
◎2015年11月にFSBは、総損失吸収能力(TLAC)の具体的水準を公表し、自己資本規制への対応資本を含めて、損失吸収できる社債などをリスク資産比で2019年に16%、2022年に18%保有することを義務づけた。