スペイン危機
読み方: | すぺいんきき |
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英語: | Spanish Financial Crisis |
分類: | 金融危機 |
スペイン危機は、「スペイン金融危機」や「スペイン経済危機」とも呼ばれ、2012年にユーロ圏のスペイン王国が直面した金融・財政危機をいいます。これは、欧州債務危機の一つで、財政を粉飾したギリシャ危機とは異なり、1990年代に日本が直面した不動産バブル崩壊による危機と似ています。
目次:コンテンツ構成
スペイン危機の前
スペインは、1990年代後半以降、不動産業や建設業などの内需が成長力の源泉となり、ユーロ導入後の2000年-2007年の年平均実質GDP成長率は3%を上回るなど好調を呈し、特に不動産市場の成長は世界的に顕著で、2003年には対前年度比20%を超える成長率となりました。
しかしながら、不動産市場の成長の一方で、銀行の債権に占める不動産融資の比率が次第に上昇し、ついには不動産バブルの状態となりました。
スペイン危機の背景
2000年代にユーロ導入により不動産ブームに沸いていたスペインは、2008年のリーマンショックなど世界的な金融危機を契機に不動産バブルが崩壊し、スペインの多くの銀行は巨額の不良債権を抱えるようになりました。
さらに、2010年代の欧州債務危機による景気低迷で銀行経営が深刻化し、2012年には金融システムが大きく揺らぐ事態となりました。
◎スペインの銀行の多くは、中小の貯蓄銀行(カハ)が合併して発足したため、経営力が弱いという根本的な問題があった。
◎スペインは、銀行の不良債権という問題以外に、地方財政の悪化という難問も同時に抱えていた。
スペイン危機の経過
2012年5月、スペインの銀行の不良債権が資産の9%に上昇し、大手銀行のバンキア(2010年に7つのカハが合併して誕生した銀行)が政府に支援を要請したのを契機に市場の不安が高まりました。
また、スペイン国債の利回りも大きく上昇し、次第に市場からも締め出されつつありました(当時、銀行への公的資金注入の原資を確保する必要があったが、国債や政府機関債の発行による資金調達が困難となった)。
このような状況の中、スペイン政府は、2012年6月に欧州連合(EU)に対して、正式に金融支援を要請することになり、ユーロ圏では、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルに次いで、ついに圏内4位の経済大国の支援まで迫られることになりました。
・2012/5/9:バンキアの一部国有化が決定
・2012/6/9:EUが最大1000億ユーロを支援することを表明
・2012/6/13:ムーディーズがスペイン国債を3段階格下げ
・2012/6/14:スペイン国債が急落(利回りが7%台に上昇)
・2012/7/19:中央政府が自治州向け緊急融資枠として180億ユーロを確保。いくつかの自治州が支援要請
・2012/9/3:バンキアに銀行再編基金から資本注入
・2012/10/5:月次失業率が25%を突破
スペイン危機のその後
スペインは、支援後、深刻な危機に対応するため、ストレステストを行い、国内銀行を優良銀行と不良銀行とに分類し、優良銀行を再編して強化しました。その一方で、不良銀行は清算し、また大量の不良債権を処理するための「スペイン資産管理会社(SAREB)」を設立するなどしました。
実際、支援を受けていた2013年は、経済状況は非常に厳しかったですが、上記の施策により、次第に銀行システムは改善し、2014年1月にアイルランドに次いで、金融支援プログラムを脱却しました。
<2013年の経済状況>
GDPの年成長率は1.3%までに減速し、失業率は26.4%を記録した。また、財政赤字はGDPの6.7%となり、政府債務はGDPの100%に達した。