フィンセン文書

読み方: ふぃんせんぶんしょ
英語: FinCEN Files
分類: 情報流出

フィンセン文書(FinCEN Files)は、アメリカ合衆国の金融当局から漏洩したとされる内部文書(ファイル)をいいます。

全部で2,657件のファイルから成り、その内の2,121件を占めるのが銀行から提出された「不審行為報告書(SAR)」で、2020年9月20日にその存在が報道機関を通じて世界に明らかにされました。

ここでは、世界の金融業界を揺るがすことになった「フィンセン文書」について、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

フィンセン文書の入手と公表

フィンセン文書は、最初に米国のニュースサイトのバズフィード(BuzzFeed)が入手し、その後、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に共有され、1年超の分析を経て、2020年9月20日に世界に公表されました。

この文章の分析には、世界88カ国108の報道機関が関わり、400人ものジャーナリストが難解で技術的な文書を読み解き、世界の大手金融機関が世間に知られたくない内容(巨額マネーロンダリングの黙認の可能性)を明らかにしました。

フィンセン文書のFinCENとSAR

フィンセン文書(FinCEN Files)は、米国の金融当局(米財務省のFinCEN)から流出したとされる内部資料の呼称で、「FinCEN」と「SAR」がキーワードとなります。

FinCEN

FinCENは、「Financial Crimes Enforcement Network」の略で、米財務省の金融犯罪取締ネットワークのことをいう。

SAR

SARは、「Suspicious Activity Report」の略で、不審行為報告書(不審なアクティビティに関する報告書)のことをいう。

FinCENとSAR

FinCENは、SAR(不審行為報告書)を収集し、マネーロンダリングやテロ資金、金融犯罪などを監視し、現在、米ドル建ての不審な取引については、アメリカ国外のものであっても、FinCENへの報告が義務付けられている。

一方で、SARは、銀行の金融犯罪に関する担当者やコンプライアンスの担当者などによって作成され、FinCENに報告される。

フィンセン文書の問題(深刻性)

フィンセン文書に含まれる2,657件のファイルのうち、2,121件がSARであり、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の分析の結果、違法性が疑われる巨額のマネーロンダリング(資金洗浄)に対し、過去20年近く、世界の大手金融機関(銀行)が利用されていた可能性があることが明らかになりました。

その背景として、国外への送金を簡単にする上で、米ドルなどの国際通貨に交換する必要があり、国際的な銀行が利用されていたと見られています。

◎世界において、疑わしい取引の総額は、1999年から2017年にかけて、2兆ドル規模に上っている。

◎世界の大手金融機関がテロリストや犯罪者、麻薬王、不正な富を築く政治家などの疑わしい取引を黙認していた可能性があり、一方でこうした疑惑を知りながら、なぜ対処しなかったのかという疑問が生じている。

フィンセン文書で明らかになったこと

世界の金融機関において、フィンセン文書で明らかになったこととして、以下が挙げられます(以下は、報道された例)。

◎英国のHSBCは、自行が詐欺に利用されているという指摘を米捜査当局から受けた後も、世界中で数百万ドルもの不正資金の取引を看過していた。

◎英国のスタンダード・チャータード銀行は、10年以上にわたってテロ組織の資金源となっていた疑いがある。

◎米国のJPモルガンは、オフショア企業の所有者を把握しないまま、ロンドンの口座への10億ドル以上の送金を承認していた。後に、この所有者が、FBIの10大重要指名手配犯の1人だと判明した。

◎米国のバンク・オブ・アメリカやシティバンクなどは、スイスに逃亡した政治家の不正な取引を処理していた疑いがある。

◎独のドイツ銀行は、組織犯罪やテロ組織、薬物密売人などの資金洗浄の温床になっていた疑いがある。

◎アラブ首長国連邦(UAE)の中央銀行は、対イラン制裁を破った地元企業への警告を受け取ったにも関わらず、対策をしなかった。

◎日本のゆうちょ銀行は、流出したSAR(不審行為報告書)において、複数の事例が含まれていた。また、一部の取引において、所在を確認できない外国人の口座が使われていた。

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