裁定取引
読み方: | さいていとりひき |
---|---|
英語: | Arbitrage |
分類: | 裁定取引 |
裁定取引は、「アービトラージ取引」とも呼ばれ、市場にできる価格差を利用して利益を獲得しようとする取引をいいます。これは、市場間に生じる「歪み(乖離)」に着目し、同一の性格を持つ2つの商品の間で、割安な方を買い、割高な方を売ることにより、理論上、リスクなしで収益を確定させることができるものです。
目次:コンテンツ構成
裁定取引の収益機会
現在、世界中のマーケット(市場)において、株式や債券、金利、通貨(外国為替)、コモディティなど多くの商品が日々取引されていますが、同じ商品であっても、市場(場所・時間等)の違いにより、価格差(乖離)が生じたり、現物の取引価格と先物の理論価格の間に価格差(乖離)が生じたりすることがよくあります。
このような状況に対して、裁定取引では、市場の価格がいずれ理論価格に近づき、価格差(乖離)がなくなることで割高や割安な状態が解消され、そこで反対売買を行なうことによって、利鞘(収益)を得ることができるとされます。
<市場でよくある裁定取引>
・現物市場と先物市場との間のスプレッド
・同一の先物で異なる限月間での「限月間スプレッド」
・異なる先物市場間での「市場間スプレッド」
裁定取引の種類:裁定買いと裁定売り
裁定取引には「裁定買い」と「裁定売り」の2つがあり、以下は、現物と先物の間の取引内容です。
裁定買い:先物売り/現物買い
裁定買いは、先物を売って現物を買う取引で、通常、先物が高く・現物が安い時に行われ、この状況に変化が生じた時に取引は解消されます。また、このポジションを組んで、まだ裁定取引を解消していない現物買いの残高を「裁定買い残」と言います。
裁定売り:先物買い/現物売り
裁定売りは、先物を買って現物を売る取引で、通常、先物が安く・現物が高い時に行われ、この状況に変化が生じた時に取引は解消されます。また、このポジションを組んで、まだ裁定取引を解消していない現物売りの残高を「裁定売り残」と言います。
裁定取引の具体例
例えば、日本の株式市場でよく行われる裁定取引には、日経平均と日経平均先物を対象とした取引があります。
具体的には、日経平均から日経平均先物の理論価格を算出し、日経平均先物に実際に付いている価格が理論価格を上回った時に「先物売り/現物買い」、一方で先物価格が理論価格を下回った時に「先物買い/現物売り」といった取引を行い、先物価格が理論価格にサヤ寄せした時に反対売買をすることで、その価格差分が利益となります。
◎通常の取引では、先物価格は決済を先に伸ばしているため、理論上はその間の金利分だけ、現物価格よりも高くなるのが普通。
◎東京証券取引所では、情報開示の一つとして、「裁定取引に係る現物株式の売買及び現物ポジション(全取引参加者報告合計)」を日々公表。
裁定取引の実践
裁定取引は一見、ノーリスクに見えますが、それ相当の収益(リターン)を確保するには高い専門性やノウハウが必要であり、またマーケットには、裁定取引専門のアービトラージャー(市場参加者)も存在します。
一般にマーケットにおいて、裁定取引で成功するには、(1)特定の市場や商品に関して他の参加者より情報収集が容易であること(情報収集力)、(2)豊富な資金力や取引ツールを持つこと(取引力)、(3)万が一、取引が途中で不成立になっても、損害を回避する手段があること(リスク管理力)、などの強みが必要です。
なお、市場全体で見れば、裁定取引は市場間の価格差を是正する方向に圧力をかけるため、市場の歪みを正し、適正な市場価格の形成に寄与していると言えます。