商業不動産担保証券(CMBS)
読み方: | しょうぎょうふどうさんたんぽしょうけん |
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英語: | Commercial Mortgage-Backed Securities |
分類: | 証券化商品 |
CMBSは、"Commercial Mortgage-Backed Securities"の略で、日本語では「商業不動産担保証券」のことをいいます。
商業用不動産ローンからの元利金を裏付け(担保)に発行される証券で、モーゲージ証券(MBS)の一種あり、またMBSとは、不動産担保融資の債権を裏付け(担保)として発行される証券の総称で、運用面において、高い流動性や高い信用力、高い利回りなどが魅力となっています。
ここでは、商業不動産担保証券(CMBS)の概要について、簡単にまとめてみました。
目次:コンテンツ構成
商業不動産担保証券(CMBS)の仕組み
商業不動産担保証券(CMBS)は、基本的には、複数の商業用不動産ローンを束ねて、モーゲージプールを組成し、このモーゲージプールを裏付けに発行されます。
(1)複数の商業用不動産ローンをプールする(米国の場合、50~300が一般的)。
(2)プールしたローン債権を特別目的会社(SPC)等に売却する。
(3)SPC等は、それらを担保にして、格付けの異なる数種類のクラスの証券を発行する。
(4)投資銀行や証券会社などが発行された証券を引受け、投資家に販売する。
ちなみに、CMBSは、1980年代後半の「米国のS&L(貯蓄貸付組合)危機」を契機に生まれた副産物で、商業用不動産のリスクを金融システムから民間投資家に移転するための手段として開発されました。
商業不動産担保証券(CMBS)の主な特徴
商業不動産担保証券(CMBS)は、商業用不動産ローン債権を担保として発行される証券で、主な特徴として以下が挙げられます。
◎CMBSは、複数のノンリコースローン(責任財産限定型の融資)を束ねて発行され、また融資の対象となっている商業用不動産の裏付け価値がローンの信用度となり、発行される証券の信用度を決定する要素にもなる。
◎CMBSのローン債権の担保となる商業用不動産には、オフィスビルやホテル、ショッピングモール、物流施設、工業団地、賃貸マンションなどの様々なタイプの物件があり、また各々の物件に需給要因や収入・費用、地域性などの特性があり、それらによってローン債権の価値が左右される。
◎CMBSは、シニア、メザニン、ジュニア、エクイティなど「トランシェ」と呼ばれるいくつかの階層に分けられて証券が発行され、また格付会社は、階層毎にプールされたローンを審査し、その信用度に従って格付けを行う。
◎トランシェは優先劣後構造を持ち、上位トランシェほどキャッシュフローを先に享受し、発生した損失は後で被る。そのため、下位になるほど損失のリスクが高くなる一方で、トランシェ間のリスクの差は利回りの差に反映されることになる。
商業不動産担保証券(CMBS)への投資
商業不動産担保証券(CMBS)は、世界では、ファンドや年金基金、機関投資家、富裕層などが投資(購入)を行い、現在、日本では、個人投資家は直接購入できませんが、一方でCMBSを投資対象とした投資信託は購入することができます。
◎CMBSに投資する際には、特定のトランシェに投資する。また、各々のトランシェは個別証券のようなもので、社債と同様に売買する。
◎CMBSは、伝統的な債券(社債等)と比べて、高い利回りとなっており、またリスク低減が図れ、ポートフォリオにおいて分散効果が期待できる。
◎CMBSに投資する際には、ローン債権の担保になっている不動産価値を正確に理解し、ローンのリスクを正確に評価することが重要である。特にプールの中で、比較的規模の大きいローンの一つがデフォルトした場合、影響は大きい。
◎米国のCMBSでは、10年が典型的な償還期限となっており、また投資適格(スーパーシニア)のCMBSの流動性は社債などよりも高い。
◎米国のCMBSでは、不動産価値(物件価格)に対するローン残額の割合である「Loan-To-Value(LTV):融資比率」は60%程度であり、物件価格がある程度下がっても保全されている。
◎CMBSにおいて、不動産価値の下落等によって損失を被る順序は、最初に最下位にあるエクイティが損失を被り、その後、ローン部分にまで損失が広がると、低格付のトランシェから順に上位の格付けのトランシェに損失が広がる。