電子マネー
読み方: | でんしまねー |
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英語: | Electronic Money |
分類: | 金融商品 |
電子マネー(電子貨幣)は、現金代わりに使える、お金を電子化したものをいいます。これは、キャッシュレス決済の一つで、電子的なデータ(金銭価値を示すデータ)のやり取りを通じて、現金(貨幣や紙幣)と同じように、モノを買ったりサービスを受けたりすることができるものです。
具体的には、レジの端末にICカードやスマホなどをかざして支払いをする決済手段、もしくはプリペイドカードを購入してオンラインゲームなどのネット支払いをする決済手段と言えば、イメージがしやすいかと思います。
現在、電子マネーは、法律などで明確に定義された用語ではないので、様々な説明がされており、また使い方も結構曖昧になっています。ちなみに、日本銀行では、電子マネーについて、「利用する前にチャージを行う、プリペイド方式の電子的な決済手段を指す」と説明しています。
目次:コンテンツ構成
電子マネーの歴史
電子マネーを理解する上で、キャッシュレス決済の歴史について、簡単に説明したいと思います。
1961年:日本初のクレジットカードを開始(JCB)
1999年:J-Debitを開始
2001年:Edy(現・楽天Edy)、Suicaを開始
2005年:QUICPay、iDを開始
2007年:PASMO、WAON、nanacoを開始
2014年:LINE Payを開始
2016年:楽天ペイを開始
2018年:d払い、PayPayを開始
2019年:メルペイ、au Payを開始
日本において、街中で利用するキャッシュレス決済は、1960年代初頭にクレジットカードから始まり、長い間、キャッシュレス決済と言えば、クレジットカードだけでした。
そして、時は流れて、1990年代末にデビットカードが開始され、2000年代に電子マネーが開始されました。その後、2010年代にコード決済が開始され、今日では、街中で利用するキャッシュレス決済の選択肢には、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、コード決済の4つがあります。
また、電子マネーは、コード決済より早く、2000年代から提供されており、その間、ガラケーからスマホへと時代が変わり、今日では、スマホなどに電子マネーを設定して利用する人が多くなっています。
ちなみに、ネットで利用する電子マネーについては、1997年にBitCashが、また1998年にWebMoneyが開始されました。
電子マネーの種類
電子マネーの種類は、大きく分けて、「ICカード型電子マネー」と「サーバー型電子マネー」の二つがあります。
ICカード型電子マネー
ICカード型電子マネーは、街中の加盟店で利用する、残高がICチップに記録されるもので、その種類には、交通系電子マネー(交通系ICカード)、流通系電子マネー、クレジットカード系電子マネーがあります。
いずれも、高速のデータ送受信ができる、近距離無線通信規格の「FeliCa」に対応しており、電子マネーを搭載したICカードや電子マネーを設定したスマホなどを、レジの端末にかざすだけで支払い(決済情報のやりとり)が完了します。
また、決済方式については、プリペイド(前払い)型、ポストペイ(後払い)型、デビット(即時払い)型の3つがありますが、基本的には、交通系電子マネーと流通系電子マネーが前払いを主体としているのに対して、クレジットカード系電子マネーは後払いを主体としています(その他に、オートチャージもあり)。
◎交通系電子マネー(交通系ICカード)は、鉄道会社などが発行する、IC乗車券と電子マネーが一つになったもので、現在、代表的なものとして、SuicaやICOCA、TOICA、PASMOなどがある。また、いずれかのカードを一つ持っていれば、全国相互利用サービスにより、日本全国で利用できる。
◎流通系電子マネーは、流通系企業が発行するもので、現在、セブン&アイグループのnanaco、イオングループのWAON、楽天グループの楽天Edyがある。
◎クレジットカード系電子マネーは、クレジットカードと紐付けて決済するタイプのもので、現在、NTTドコモのiDと、JCBのQUICPayがある。
サーバー型電子マネー
サーバー型電子マネーは、残高が電子マネー発行会社が管理する、インターネット上のサーバーに記録されるもので、現在、代表的なものとして、BitCashやWebMoneyなどがあります。
いずれも、オンラインゲームや音楽、動画、電子書籍など、ネットの加盟店で利用するプリペイド式の電子マネーで、また支払いにあたっては、決済画面で利用する電子マネーを選択し、プリペイドIDを入力するだけで支払いが完了します。
なお、サーバー型電子マネーのタイプには、コンビニなどでカードやシートで購入できる「使い切りタイプ」と、会員登録してチャージして繰り返し使える「チャージタイプ」の二つがあります。
電子マネーのスマホ利用
電子マネーのスマホ利用にあたって、「アプリの設定」と「利用できる仕組み」について、簡単に説明したいと思います。
アプリの設定
街中で利用するICカード型電子マネーは、ICカードやスマホなどで利用できますが、スマホで利用する場合は、アプリの設定が必要になります。
◎iPhoneでは、ウォレットアプリの「Apple Wallet」に電子マネーを設定することで、決済サービスの「Apple Pay」で端末にかざして支払うことができる。
◎androidでは、ウォレットアプリの「Google Wallet」、もしくは専用アプリに電子マネーを設定することで、決済サービスの「Google Pay」や「おサイフケータイ」で端末にかざして支払うことができる。
利用できる仕組み
そもそも何で、スマホがICカードのように、電子マネーが利用できるのでしょうか?
その仕組みは意外とシンプルで、レジの端末はどちらも同じで、またICカードにもスマホにも、ハード面では、かざすだけで高速のデータ送受信ができる、近距離無線通信規格の「FeliCa」のICチップとアンテナが内臓されているからです。
では、違いは何かというと、ICカードではICチップ内に、あらかじめソフトウェアが組み込まれているのに対して、スマホでは、アプリ(ソフトウェア)で電子マネーを設定することにより、同じように利用できるようになっています。
一般にスマホは、パソコン並みの性能があり、スマホに入れるアプリは高機能にすることができるので、残高確認や利用履歴、チャージなど様々な機能が利用できるようになっています。
電子マネーのメリット
電子マネーのメリットについて、4つほど説明したいと思います。
一つ目のメリットは、すばやく簡単に支払えることです。ICカード型電子マネーでは、ICカードやスマホなどをレジの端末にかざすだけで、すばやく簡単に支払いが完了します。また、サーバー型電子マネーでは、決済画面でプリペイドIDを入力するだけで支払いが完了します。
二つ目のメリットは、決済時に本人確認が不要で、手軽に利用できることです。特にプリペイド型の電子マネーは誰でも利用可能で、またチャージした金額の範囲内でしか使えないため、使いすぎを防ぐ効果もあります。
三つ目のメリットは、何らかの特典が受けられることがあります。現在、電子マネーによっては、決済するだけでポイント還元が受けられたり、また特定の店舗で割引が受けられたりするといった特典が用意されています。
四つ目のメリットは、利用履歴(支払履歴)を確認できることです。電子マネーは、アプリやサイトで、利用履歴を見ることによって、いつ・どこで・どれだけ使ったかを簡単に把握することができます。
電子マネーの注意点
電子マネーの注意点について、4つほど説明したいと思います。
一つ目の注意点は、少額決済の支払手段であることです。電子マネーは、手軽に決済ができる一方で、一回の利用上限額がクレジットカードやデビットカードなどより低く、高額決済には向いていません。
二つ目の注意点は、原則として、プリペイド型の電子マネーは払い戻しができません。ただし、IC乗車券と電子マネーの機能を持つ交通系ICカードでは、手数料はかかりますが、払い戻しができます。
三つ目の注意点は、提供元の加盟店でしか使えないことです。現在、電子マネーは、様々な種類がありますが、それぞれで加盟店が異なっているので、利用する際には、よく使う店舗やサービスなどで選ぶことが必要です。
四つ目の注意点は、紛失・盗難時には「利用停止の登録」が必要です。なお、サーバー型電子マネーでシートタイプとギフトカードは、紛失や盗難にあった際には再発行されません。
電子マネーと仮想通貨の違い
電子マネーと仮想通貨(暗号資産)は、どちらも法定通貨ではなく、電子的な貨幣類似物ですが、一方で両者には、以下の点で大きな違いがあります。
・電子マネーは、仮想通貨と異なり、転々と流通することがない
・電子マネーは、事業者が価値を保証しているが、仮想通貨は取引所で取引され、価値が変動する
・電子マネーは、一元管理している管理者(事業者)がいるが、仮想通貨は、ブロックチェーンで管理され、一元管理している事業者がいない
・電子マネーは、利用者の使用面で加盟店の構築など事業者が主体となっているが、仮想通貨は主体となるものが誰もいない
・電子マネーは、事業者のクローズドなシステムであるが、仮想通貨は、ネット上のオープンなシステムで国境の障壁もない