求償権
読み方: | きゅうしょうけん |
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分類: | 債権・債務 |
求償権は、ある人が他人との法律関係で不利益を受ける一方、その不利益の結果として第三者が利益を得た場合、実際に不利益を受けた者が損害賠償の形で、その不利益を第三者から償還請求することのできる権利をいいます。
民法によって認められた権利で、例えば、保証人の一人が債務を弁済して他の債務者が債務を免れた時のその分の返還請求、債務の弁済によって不当利得が生じた場合の不当利得者に対する返還請求、他人の行為によって損害賠償した場合のその者に対する返還請求などが挙げられます。
ここでは、ローンや慰謝料などの問題でよく出てくる「求償権」について、その概要を簡単にまとめてみました。
目次:コンテンツ構成
ローンの求償権
求償権は、ローンなどの債務においては、連帯債務者や保証人など、債務者の債務を弁済した者が、その債務者に対して持つ「返還請求権」をいいます。
例えば、ローン(債務)の保証人が主たる債務者に代わって債務を返済した場合、保証人は主たる債務者に対して求償権を持つことになります。
<民法の求償権(連帯債務者・保証人関連)>
・第351条:物上保証人の求償権
・第442条:連帯債務者間の求償権
・第459条:委託を受けた保証人の求償権
・第460条:委託を受けた保証人の事前の求償権
・第465条:共同保証人間の求償権 他
慰謝料の求償権
求償権は、慰謝料においては、共同不法行為者の一人が自身の責任部分を超えて慰謝料を支払った場合に、残りの共同不法行為者に対して、自己の責任を超過する分を請求できる権利をいいます。
例えば、男女間でよくある不貞行為による慰謝料の支払いの際には、当事者間(不貞行為を行った二人の間)で、一方が他方に対して超過した支払分を請求するもので、時としてトラブルになることも多いです(日常的によくある)。
一般に不貞行為の慰謝料の場合、精神的苦痛を受けた被害者(配偶者)は、当事者の二人に対して、慰謝料の請求額の配分を自由に決めて請求できますが、一方で当事者の二人の間には責任の負担割合があり、通常、請求額の配分割合と責任の負担割合が異なる状況で支払った場合に「求償権」が発生します。
求償権の消滅時効
求償権には、消滅時効(ある一定期間、権利を行使しなければ、権利そのものが消滅してしまう制度)があり、保証人が主たる債務者に対する求償権の消滅時効は、商行為の保証委託による場合が5年、その他が10年となっています。
なお、消滅時効の起算点は、債権者に弁済をするなど免責行為をした時点で、そこから時効が進行することになります。
住宅ローンに対する信用保証会社の求償権
個人が住宅ローンの返済を出来なくなり、期限の利益を喪失した場合、金融機関は系列の保証会社に対して代位弁済を請求し、保証会社は債務者に代わってローンを返済することになります。
これによって、住宅ローンの債権や担保物権などは、求償権の範囲で保証会社に移転します。
ビジネスローンに対する信用保証協会の求償権
中小企業者がマル保融資(信用保証協会の保証付のビジネスローン)の返済を出来なくなり、期限の利益を喪失した場合、金融機関は信用保証協会に対して代位弁済を請求し、信用保証協会は債務者に代わってローンを返済することになります。
これによって、ビジネスローンの債権や担保物権などは、求償権の範囲で信用保証協会に移転します。