デフォルト
英語: | Default |
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分類: | デフォルト |
デフォルト(Default)は、英語では、怠慢や債務不履行、初期設定、欠席、欠場といった意味があります。これは、日本語では、金融に関しては「債務不履行」といった意味で使われ、また金融以外に関しては「初期設定」や「普通、定番、仕様」といった意味で使われ、各々で大きく異なっています。
目次:コンテンツ構成
デフォルトとは何か
デフォルトは、金融においては、「債務不履行」のことで、債券の発行者が破綻等で利払いや元本の支払いを停止することや、融資やプロジェクトファイナンスなどの返済が滞ることをいいます。
これは、事業会社だけでなく、国や地方自治体などでも起こることがあります。また、その状況については、大きく分けて、履行が遅れる「履行遅延」、履行することができなくなった「履行不能」、履行したが不十分だった「不完全履行」の3つに分類されます。
一般に、デフォルトという用語は、債券や大型のファイナンス案件で使われることが多く、一方で、中小企業や個人などの小口の融資に対しては、「デフォルト」ではなく、「債務不履行」が使われることが多いです。
<本用語の使用例>
・このまま行けば、対外債務はデフォルトになるだろう
・最近の通貨安は、デフォルトの現実的なリスクを示唆している
・投資会社の間では、数年以内にデフォルトに陥るとの見方が強まっている
デフォルトの具体例
世界の金融経済史の中で、デフォルトは、いつの時代でも起きており、21世紀に入ってからの代表的な例として、以下の5つについて、簡単に解説したいと思います。
アルゼンチン危機のデフォルト
アルゼンチンは、広大で肥沃な国土を背景に、農業や畜産業などを主要産業とし、工業や鉱業も発展するなど、南米でブラジルに次ぐ域内大国ですが、なぜか、何度もデフォルトを起こしています。
その背景として、1816年にスペインから独立して以降、加速度的な発展と凋落を繰り返す「特異な歴史」や、政府の放漫財政などに起因すると言われています。
実際、21世紀に入ってからも、2001年12月に7度目、2014年7月に8度目、2020年5月に9度目のデフォルトを起こしており、国際金融市場の問題児となっています。
ちなみに、デフォルトしたアルゼンチン国債には、米ドル建てだけでなく、円建て外債のサムライ債もあり、日本の投資家も結構巻き込まれました。
リーマンショックのデフォルト
リーマンショックとは、2008年9月15日にアメリカの名門投資銀行であったリーマンブラザーズが、サブプライム問題で経営破綻したことにより、世界金融危機の引き金となった出来事、およびその後の世界金融危機と世界同時不況のことをいいます。
この世界金融危機では、世界中で多くのデフォルトが発生しました。また、日本に直接関係する代表的なものとしては、リーマンブラザーズが発行したサムライ債がデフォルトしたほか、世界金融危機の中で起こったアイスランド危機により、同国のカウプシング銀行のサムライ債がデフォルトし、日本の投資家も結構巻き込まれました。
ギリシャ危機のデフォルト
ギリシャ危機とは、2010年代に欧州を揺るがせた、ギリシャ共和国の財政危機をいいます。その発端は、政権交代前の旧政権の財政赤字の隠匿でしたが、その他に、財政と通貨は別という、ユーロ圏の構造問題も背景にありました。
この危機では、国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)が支援に乗り出し、ギリシャ国債のデフォルトはどうにか避けられました。その一方で、緊縮財政や民営化など支援条件に不満を募らせた国民の声を背景に、ギリシャ政府が何度も迷走し、2015年6月にIMFの借入を延滞し、IMFに対してデフォルトに陥った先進国として、最初の事例となりました。
新興国の国債のデフォルト
21世紀に入ってからも、最初に説明したアルゼンチン以外に、経済・金融危機などにより、幾つかの新興国でデフォルトが起っています。
・2008年12月:南米のエクアドル国債がデフォルト
・2018年1月:南米のベネズエラ国債がデフォルト
・2020年3月:中東のレバノン国債がデフォルト
・2020年11月:アフリカのザンビア国債がデフォルト
・2022年5月:南アジアのスリランカ国債がデフォルト
ロシアのウクライナ侵攻によるデフォルト
2022年のロシアのウクライナ侵攻では、ロシアとウクライナの双方でデフォルトが起っています。
このデフォルトは、これまでに説明したものとは全く異なり、戦争に起因したものであり、侵略した側のロシアは、経済制裁を原因とし、一方で侵略された側のウクライナは、国家破壊を原因としています。
デフォルトが起きた場合
一般にデフォルトが起こると、利息が支払われなかったり、元本の回収ができなかったりするため、非常に深刻な事態となり、時には、金融機関や関連企業、投資家、マーケットなどを揺るがすこともあります。
ここでは、社債がデフォルトした場合、国債がデフォルトした場合、プロジェクトファイナンスがデフォルトした場合について、簡単に解説したいと思います。
社債がデフォルトした場合
社債がデフォルトするとは、社債を発行した企業が、日々の資金繰りが苦しくなり、利息や元本を事前に約束した期日に支払えなくなることをいいます。
この場合、社債を発行する企業は、最終的に破綻することも珍しくありません。その一方で、社債を保有する投資家は、利息を受け取れないだけでなく、元本が償還されないことも多く、大きな損失を被ることになります。
ちなみに、日本で販売される社債は、デフォルトリスクが低い優良企業のものが中心ですが、一方で、米国など海外では、デフォルトリスクが高い反面、高金利のジャンク債も数多く販売されています。
国債がデフォルトした場合
国債がデフォルトするとは、国債を発行した政府(国家)が、財政上の問題により、利息や元本を事前に約束した期日に支払えなくなることをいいます。
国債は、政府が返済を約束した借用証書であり、通常、その国の債券の中で信用力が一番高いです。すなわち、国債は、安全で確実なリターンを得られる可能性が高いと考えられ、国内外の投資家が投資対象にしており、また様々な金融商品に組み込まれることが多いため、万一、デフォルトが生じると多大な影響が広がります。
一般に国債は、大きく分けて、自国通貨建てと外国通貨建ての二つがあります。先進国の自国通貨建ての国債は、デフォルトするリスクが非常に小さいですが、一方で新興国が発行する米ドル建てなどの外国通貨建ての国債は、これまでに幾つかの国でデフォルトが起っています。
実際に、新興国で国債がデフォルトした場合、外貨準備高が急減して金融・通貨危機に陥っていることが多く、もはや自国内だけでは解決できない状態になっており、国際機関(国際通貨基金や世界銀行など)や関係国と協議することになります。
この場合、債務再編交渉が行われると共に、財政再建上の厳しい条件が課されるため、国民にも大きな負担が発生します。そして、財政を再建し、国際的に信用を回復し、再び、国際金融市場に復帰して、国債を発行できるようになるまでには長い時間を擁します。
プロジェクトファイナンスがデフォルトした場合
プロジェクトファイナンスとは、複数の金融機関からなる協調融資団から、特定の事業(プロジェクト)を対象に、そのプロジェクトに属するキャッシュフローを裏づけとして行われる資金調達手法をいいます。
例えば、資源開発やインフラ開発などの大型案件において、巨額の資金調達を行ったプロジェクトファイナンスでデフォルトが起った場合、融資団などに対して、利払いの延期や債務の削減交渉などが行われて事態の打開を図ることが多いです。
この場合、プロジェクトの状況によっては、金融機関や関連企業などに、多額の損失が発生することもあります。
債券の格付けとデフォルト
一般に国債や地方債、社債などの債券は、投資家が直接保有することから、投資家がデフォルトリスク(信用リスク)を直接抱えることになります。そのため、債券投資にあたっては、利払いや元本の返済の安全性について客観的に知る必要があり、格付けが一つの判断材料になります。
格付けについて
格付けとは、S&PやMoody's、Fitch Ratingsなどの格付会社が債券の信用力や元利金の支払能力の安全性などを総合的に分析してランク付けし、AAAやAa1などの符号で表示したものです。これは、永続的なものではなく、発行体の財務状況などの変化に合わせて、随時見直されます。
債券のデフォルトについて
債券のデフォルトとは、国や企業などの債券の発行体から、債券の保有者に、予め定められた期限通りに利子の支払いや元本の返済がなされない状態のことをいいます。
通常、このデフォルトは、債券の発行体の資金面での支払能力が低下することによって起こりますが、一方で、これとは異なり、支払能力があるのに、事務的な問題等で返済が滞る「テクニカルデフォルト」という概念もあります。
ちなみに、テクニカルデフォルトの例としては、アメリカにおいて、与野党の対立により、債務上限問題で合意できない場合に起こりうるデフォルトが挙げられます。
債券のデフォルトの認定について
債券のデフォルトは、どこが認定するのかというと、通常、格付けを行う格付会社が実際の状況を勘案し、デフォルトに対応する格付けを付けた時点で、デフォルトが認定されることになります。
これに関しては、それぞれの格付会社で、具体的に定義されています。また、格付会社によっては、一部債務について利払いや元本返済を停止した場合の「選択的デフォルト」と、利払いや元本返済が不可能になったり、債権者への返済を拒否したりした場合の「無条件デフォルト」に違いをつけたりしています。
ちなみに、投資家や市場参加者の方でも、「秩序だった、または無秩序な」、「ソフトまたはハードな」、「管理されたまたは混乱した」デフォルトなどと表現し、リスク認識として違いをつけています。
金融以外における「デフォルト」の意味
デフォルトは、金融以外においては、ソフトウェアやハードウェアの「初期設定」、およびそれが転じて「普通、定番、仕様」といった意味で日常的に使われており、また「デフォ」とも略されます。
ソフトウェアやハードウェアのデフォルト
デフォルトは、ソフトウェアやハードウェアにおいては、初期設定(標準設定)のことをいいます。これは、パソコンソフトやスマホアプリ、コンピュータ、周辺機器、電子機器などで広く使われており、予め設定されている「標準の動作条件設定」であり、通常、個人向けの場合は、そのままの状態で普通に使うことができます。
なお、デフォルトに対して、ユーザーが設定を変更することを「カスタマイズ」と言います。
<本用語の使用例>
・トラッキング防止機能がデフォルトで有効になる
・パワーオンにすると、デフォルトでEVモードとして始動する
日常的な意味のデフォルト
デフォルトは、日常的(俗語的)には、普通や定番、仕様のことをいいます。これは、「基本的な状態」を意味する場合に使われ、通常、年代の若い方が用いることが多いです。
<本用語の使用例>
・これは、どうしたって、赤ワインがデフォルトでしょう
・考え方や想い、感情をポジティブにアウトプットすることがデフォルトとなっている