遺言信託

読み方: ゆいごんしんたく
分類: 信託種類

遺言信託は、遺言により信託を設定することをいいます。これは、信託の方法として、信託法の第3条2項の条文「特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法」に基づくものです。

また、日常的に「遺言信託」と言った場合は、専門知識を持つ信託銀行等の業務(サービス)の一つとして提供される、遺言者と相談して遺産の分配方法を決めて公正証書遺言(遺言書)を作成し、その正本を保管し、遺言者の死後に遺言執行を引き受けるものを指します。

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遺言信託の利用と費用

信託銀行等では、自らの遺志を確実に残したい人を助けるサービス(委託者の遺言により財産権を受託者に移転して成立する信託)として、遺言書作成の支援から保管、遺言内容の執行(遺産の処分・分配)まで一括して請け負う「遺言信託」を取り扱っています。

一般に遺言信託を利用する際の費用は、信託銀等等(各社)によって異なりますが、一例としては、最初の契約時の手数料が10万円~30万円程度で、契約後の遺言書の保管料が年間5千円~1万円程度かかります。また、遺産相続の執行時には、相続財産額の0.3%~2%程度に相当する報酬を支払います(百万円程度の最低報酬額を設けているところも多い)。

昨今、高齢化社会の進展を背景に、将来的な身内の相続争い(争続)を招かず、多額の財産を円滑に引き継ぐには、一定の負担は仕方ないと考える人も増えており、信託銀行等の遺言信託の取扱いは拡大傾向にあります。

遺言信託の実務的な流れ

信託銀行等において、遺言信託の実務的な流れ(手続き等)は、以下のようになっています。

1.遺言信託の利用者(本人)は、まず信託銀行等から遺言書の作成に関する助言を受け、証人が立ち会って公正証書遺言を作成する。
2.完成した遺言書は、信託銀行等が保管し、年に1~2回程度の頻度で資産や相続人の現状と照らし合わせて、その内容とズレがないかを確認する。
3.本人が亡くなった場合、その配偶者や子どもなど事前に指定した人が信託銀行等に死亡を通知する。
4.信託銀行等は、相続人の確定、金融資産や不動産など相続財産の確定に加え、遺言書に基づく名義変更などの各種手続きを進める。

遺言信託の利点と注意点

信託銀行等の遺言信託の利点と注意点として、以下が挙げられます。

遺言信託の利点

・信頼できる法人が遺言書の内容を確実に実現する
・遺言書の書式(形式)の不備がなく有効である
・遺言書の紛失や偽造、発見漏れの心配がない
・面倒な遺言執行手続きを代行してもらえる

遺言信託の注意点

・主となる相続人に遺言信託の利用を予め通知する
・死亡を通知する人や証人が必要である
・遺言作成手数料や保管料、遺言執行報酬が必要である

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