実効為替レート
読み方: | じっこうかわせれーと |
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英語: | Effective Exchange Rate |
分類: | 為替相場 |
実効為替レートは、外国為替市場において、ある通貨の総合的な価値を示す合成レートをいいます。これは、一つの国に関して複数の為替レートが存在していることを踏まえ、特定の二通貨間の為替レートを見ているだけでは分からない「一国の通貨の対外競争力(強さ)」を単一の指標で総合的に捉えようとするものです。
目次:コンテンツ構成
実効為替レートの概念
実効為替レートは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円、ポンド/円、人民元/円などのように、ある国の通貨の価値が多通貨(世界の主要な外貨)に対して、相対的に高いか低いかを示す総合的な指標となっており、その種類には、「名目実効為替レート」と「実質実効為替レート」の2つがあります。
名目実効為替レートとは?
名目実効為替レートは、主要な貿易相手国・地域との為替レートを貿易額に応じて加重平均し、指数化したものです。
実質実効為替レートとは?
実質実効為替レートは、通貨の対外競争力が物価動向(インフレ動向)によっても変化するため、名目実効為替レートに対して、物価調整をした後のものです。
実効為替レートの算出方法は?
ユーロ圏などを除き、国ごとに通貨単位が異なるため、一定基準時点からの為替レートの変動を指数化し、貿易相手国との貿易取引量(総輸出入額)で加重平均して算出されます(市場で取引されている複数の国の通貨に対する為替レートを貿易額などに応じて加重平均して算出)。
実効為替レートの主なポイント
現在、米ドルが世界の基軸通貨になっており、例えば、日本円が米ドルに対して上昇すれば、世間一般では円高と言われますが、一方でユーロや人民元などに対して下落していれば、必ずしも円高とは言えず、外国との貿易全般で円高の影響を受けているとは言えません。
このような状況を踏まえ、通貨の実力(価値)を総合的に把握するための指標として、「実効為替レート」が使われています。
◎多通貨に対する為替レートの合成値で、二国間の為替レートだけでは分からない、その通貨の国際的な実力(価値)を示す指標である。
◎国際的な輸出競争力(対外競争力)を測る上では、単に名目為替レートの動きだけではなく、各国の物価動向を考慮に入れた実質為替レートを用いる方が望ましい。
◎実質実効為替レートを用いて、競争環境を過去と比較する場合には、単純に水準の高低を比べるだけでなく、急激な変化の有無、経済情勢の違い、自国及び競合国の経済構造の変化などにも留意する必要がある。
◎実質実効為替レートは、中長期的に割安か割高かを判断する際の材料の一つとなるが、一方で将来を占うものではない。
◎IMFの各国通貨の実質実効為替レートの評価(過大・妥当・過小)は一つの参考になる(特に米ドルやユーロ、人民元などに注目)。
実質実効為替レートの算出機関
実質実効為替レートは、国際通貨基金(IMF)や国際決済銀行(BIS)、経済協力開発機構(OECD)、各国の中央銀行などが算出しており、一国の通貨の総合的な価値が単一の指標で示されるため、その国の通貨の強さ(輸出競争力)を見る上で一つの参考になります。
IMFの実質実効為替レート
IMFでは、加盟国の経済状況や加盟国間の貿易状況などを分析する上で、世界各国の実質実効為替レートを毎月公表しています。
現在、IMFのレートについては、デフレーターとして、CPI(消費者物価指数)をベースとするものと、ULC(ユニット・レーバー・コスト)をベースとするものとの2つを算出しており、またカバレッジする対象国は、他の算出機関と比べて格段に多いです。
・デフレーター:CPIとULC
・ウェイト算式:第三国競争を加味した貿易額ウェイト
・貿易額:工業製品、コモディティ、観光サービス
BISの実質実効為替レート
BISでは、加盟する中央銀行の国・地域の実質実効為替レートを毎月公表しています。
現在、Broadベースでは約60カ国・地域、Narrowベースでは約25カ国・地域で使用されている通貨に対して算出しており、またウエイト(貿易額)の更新については、3年毎にウェイト対象期間が終了してから行っています。
・デフレーター:CPI
・ウェイト算式:第三国競争を加味した貿易額ウェイト
・貿易額:工業製品
日本銀行の実効為替レート(名目・実質)
日本銀行では、BISが作成している実効為替レート(Broad Index)の作成方法に準拠し、日本円の実効為替レート(名目・実質)を算出しています。
現在、日次で「名目実効為替レート(円インデックス)」を算出・公表し、また月次で「実質実効為替レート」を算出・公表しています。なお、時系列データについては、日銀のウェブサイトの「統計コーナ」で検索できます。
・デフレーター:CGPI(PPI、WPI)
・ウェイト算式:輸出額ウェイト
・貿易額:輸出全体