日本銀行(日銀)

読み方: にほんぎんこう(にちぎん)
英語: Bank of Japan(BOJ)
分類: 日銀

日本銀行(日銀)は、1882年に日本銀行条例に基づいて設立された、日本の中央銀行をいいます。これは、個人や企業などを対象とした銀行ではなく、金融機関を対象とした銀行で、また1万円札や5千円札、千円札といった紙幣(日本銀行券)は、銀行等の金融機関を通して、日本銀行から供給されています。

ここでは、日本の中央銀行である「日本銀行」について、簡単にまとめてみました。

目次:コンテンツ構成

日本銀行の特色

日本銀行は、金融機関を相手にする、銀行の銀行と言われる「中央銀行」で、主な特色として以下が挙げられます。

(1)日本銀行法により、「物価の安定」を図ることと、「金融システムの安定」に貢献することが、日銀の目的として定められている。

(2)日本銀行法により、そのあり方が定められている、財務省所管の認可法人(政府から独立した法人)で、政府機関や株式会社ではない。

(3)資本金は1億円で、公的資本と民間資本より構成。また、日銀の出資証券は東京証券取引所に上場され、株式に準じて取引。

(4)日本の経済政策において、金融政策の決定と実行を担当(財政政策は財務省、通商政策は経済産業省)。

(5)「日銀ネット」と呼ばれる、日本の基幹的な決済システムを運営。

日本銀行の目的と理念

日本銀行は、日本銀行法により、目的と理念が明確に定められています。

日本銀行の目的(日本銀行法第1条)

1.日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
2.日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。

日本銀行の通貨及び金融の調節の理念(同法第2条)

日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うにあたっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。

日本銀行

日本銀行の業務内容

現在、日本銀行では、「物価の安定」と「金融システムの安定」という二つの目的を達成するために様々な業務を行っており、主な業務内容として、以下のようなものがあります。

紙幣の発行・流通・管理

日本銀行は、日本で唯一の発券銀行として、「日本銀行券」と呼ばれる紙幣を発行している。具体的には、銀行等の金融機関との間で、紙幣の受払を行うことなどを通じて、紙幣の安定供給を確保し、また受け入れた紙幣の鑑査など、紙幣の信認を確保するための業務も実施している。

※鑑査:枚数の計査、真偽の鑑定および再利用可能性の判別

決済に関するサービスの提供

日本銀行は、銀行等の金融機関から当座預金(日銀当座預金:出し入れが自由な無利子の預金)を受け入れ、当座預金の振替によって、金融機関の間の資金決済を行うシステムを提供している。また、日本銀行は、国債振替決済制度など、国債の決済システムも提供しており、現在、国債取引に伴う受渡しを帳簿上の口座振替などによって処理している。

さらに、これらの決済の仕組みや方式などの改善に向けた取り組み、日本銀行以外の主体が提供する決済システムのモニタリング・評価・改善に向けた働きかけなども実施している。

金融政策の運営

日本銀行は、物価の安定を目的として、日本の金融政策の決定と実行を担当している。具体的には、政策委員会が定例的に開く「金融政策決定会合」において決定され、また決定事項の一つである金融市場調節方針に従って、日々の金融調節の金額や方法を決定し、資金の供給や吸収を実施している。

金融システムの安定に向けた取り組み

日本銀行は、日本の金融システムが正常に機能し、企業や個人などが安心して利用できる状態を確保するため、銀行等の金融機関に対し、業務運営の実態や各種リスクの管理状況、自己資本の充実度や収益力についての実態を把握するための調査を行い、経営の健全度の維持・向上を促している。

また、金融システムを全体として捉える視点に立ったリスク分析・評価なども行っているほか、金融危機時には、最後の貸し手として、一時的に資金が不足した金融機関に資金を供給することもある。

国の事務の取扱い、対政府取引に関する業務

日本銀行は、政府預金として預かっている国庫金(国の資金)の出納・計理、政府預金の管理および政府有価証券の受払・保管などの事務、国債の発行、振替決済および元利金支払いに関する事務、政府を相手方とした国債の売買などの取引も行っている。

国際業務

日本銀行は、外国為替の売買、外国中央銀行や国際機関等による円貨資産の調達・運用に関する協力など、国際金融業務も行っている。また、各種国際会議への参加などを通じて、金融市場の安定化のための取り組み、グローバルな金融経済情勢の議論、市場環境整備などの作業にも参画している。

その他に、外為法の届出書・報告書などの取り扱い、財務大臣の指示に基づいて遂行する外国為替平衡操作(為替介入)の実務など、国際金融に関連した国の業務も行っている。

その他の業務

日本銀行は、上記の業務の他にも、日銀短観等の金融や経済に関する調査・研究、企業物価指数・国際収支等の統計の作成・公表、対外説明・広報などの業務も行っている。

日本銀行の決済システム「日銀ネット」

日銀ネットは、正式名称を「日本銀行金融ネットワークシステム」と言い、日本銀行当座預金(日銀当預)の決済や国債の振替決済などを安全かつ効率的にオンライン処理する、日本の基幹的な決済システムです。

1988年に稼動開始後、決済の安定性・効率性の向上を図るため、証券と資金の同時決済(DVP)、日銀当預決済と国債決済の即時グロス決済(RTGS)化、流動性節約機能の導入、民間大口資金取引の日銀当預決済によるRTGS化などの施策を順次実施しています。

なお、日銀当預とは、金融機関が日本銀行に開設している当座預金(出し入れが自由な無利子の預金)のことで、以下の3つの役割を果たしています。

1.金融機関が他の金融機関・日本銀行・国と取引を行う際の決済手段
2.金融機関が個人や企業などの顧客に支払う現金通貨の支払準備
3.準備預金制度の対象となっている金融機関の準備預金

日本銀行の金融政策決定会合

金融政策決定会合とは、日本銀行の最高意思決定機関である政策委員会の会合のうち、金融政策の運営に関する事項を審議・決定する会合をいいます(1998年1月に発足)。

仕組み

本会合は非公開で、年8回(会合は2日間)開催され、メンバーは、日銀総裁と2人の副総裁、6人の審議委員からなり、全員平等に1票ずつの議決権を持つ。

現在、金融政策決定会合の意思決定は、合議制による多数決で決めることになっており、通常は総裁が意見を取りまとめる形で議案を提出する。また、この議案が否決されると、総裁の求心力の低下につながるため、通常は多数の賛成が得られる議案を作ることになる。

※金融政策決定会合には、財務大臣および経済財政政策担当大臣、財務省などの政府代表もオブザーバーとして出席し、意見を述べることはできるが、議決権は有していない。

会合内容

金融政策決定会合では、(1)金融市場調節方針、(2)基準割引率、基準貸付利率および預金準備率、(3)金融政策手段、(4)経済・金融情勢に関する基本的見解などを議事事項とし、毎回、金融経済情勢に関する検討を行い、次回会合までの金融市場調節方針をはじめとする、金融政策の運営に関する事項を決定している。

また、金融政策決定会合の終了後に、金融市場調節方針をはじめとする決定事項、経済・物価情勢の評価および先行きの金融政策運営の考え方が公表される。

日本銀行の組織概要

現在、日本銀行(日銀)は、4500名超の職員を擁し、東京都中央区にある本店のほかに、32の支店、14の国内事務所、7の海外事務所を擁しています。

また、日銀の最高意思決定機関である「政策委員会」を構成する、総裁と副総裁と審議委員は、いずれも国会の衆議院および参議院の同意を得て、内閣が任命する「国会同意人事」となっています。

幹部(役員)

総裁、副総裁、審議委員、理事、監事、参与
(政策委員会、業務調整会議、コンプライアンス会議)

本店

政策委員会室、検査室、企画室、金融機構局、決裁機構局、金融市場局、調査統計局、国際局、発券局、業務局、システム情報局、情報サービス局、総務人事局、文書局、金融研究所

支店、事務所

支店(32)、国内事務所(14)、海外駐在員事務所(7)