ゼロ金利政策
読み方: | ぜろきんりせいさく |
---|---|
英語: | Zero interest rate policy |
分類: | 金融政策・調節 |
ゼロ金利政策は、金融政策の一つで、中央銀行が政策金利の水準を実質ゼロパーセント(0%)に誘導することをいいます。これは、景気刺激やデフレ回避(脱却)などを目的としており、具体的には、金融市場に資金を潤沢に供給することによって、政策金利が0%に近づくように誘導するものとなっています。
目次:コンテンツ構成
ゼロ金利政策の効果と弊害
ゼロ金利政策とは、政策金利を限りなくゼロ(0%)近くに誘導する金融政策をいい、一般的には、以下のような効果があると言われています。
◎期待インフレ率を名目長期金利よりも大きく上昇させることが出来れば、実質金利が低下することになる。また、実質金利の低下は、設備投資や住宅投資などを容易にし、総需要増大効果(景気を刺激する効果)をもたらす。
◎将来価値に対する割引率が低下するため、資産の理論価格が上昇し、また資金調達コストの低下により、マネーが株式市場や不動産市場などの資産市場に流入することで、資産市場が活況を呈する方向へと進む。また、これによる資産効果を通じて、消費の拡大を促す。
◎世界経済が堅調に推移する中、ゼロ金利政策の導入国では、諸外国通貨との金利スプレッドが広がるため、自国通貨安になりやすい。この場合、輸出が増えやすい一方、輸入が減りやすくなり、純輸出の拡大による総需要増大効果が期待できる。
なお、ゼロ金利政策には、上記のような効果が期待される一方で、長い間続けると、巨額の所得移転(利子所得の移転等)による不公平、社会の非効率性の温存、モラルハザード、流動性の罠などの弊害も指摘されています。
日本のゼロ金利政策
ゼロ金利政策は、日本においては、日本銀行の金融政策により、短期金融市場(コール市場)の無担保コールO/N物レートがゼロに近い状態に誘導されることを指します。
元々は、1999年2月に日本銀行が金融システムの不安やデフレスパイラルを防ぐために、無担保コールO/N物レートを史上最低の0.15%に下げたのが始まりで、当時の速水日銀総裁が「翌日物金利はゼロでもよい」と発言したため、「ゼロ金利政策」と呼ばれるようになりました。
なお、日本のゼロ金利政策を含めた金融政策の推移は、以下のとおりで、現在は、ゼロ金利政策よりもさらに強力な「量的・質的金融緩和」と「マイナス金利」を実施しています。
・1999年2月(ゼロ金利導入)-2000年8月(解除)
・2001年3月(ゼロ金利復帰)-2006年7月(解除)
・2010年10月(ゼロ金利復帰 → 量的緩和政策も実施)
・2013年4月(より強力な量的・質的金融緩和を実施)
・2016年1月(上記に加え、マイナス金利政策も実施)
海外のゼロ金利政策
ゼロ金利政策は、世界において、1999年に日本が初めて導入したものですが、これまでに海外でも広く導入されています。
◎米国では、サブプライム問題から世界金融危機の震源地となり、2008年12月に連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利であるFF金利の誘導目標を年0.0~0.2%に引き下げ、事実上、ゼロ金利政策を導入した(2015年12月に終了)。その後、2020年にコロナ危機で再導入し、2022年に解除。
◎スイスでは、ディスインフレ傾向が強まる中、2003年3月にターゲットレンジの下限をゼロ(0%)として、事実上のゼロ金利政策を導入した(2004年9月に終了)。その後、2008年12月に、世界金融危機の中、再びゼロ金利政策を導入した。 さらに、2015年1月には、スイスフラン高を抑制するため、マイナス金利政策を導入した(現在継続中)。
◎スウェーデンは、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和の影響などによるデフレ定着を防ぐことを目的として、2014年10月にゼロ金利政策を導入した。その後、デフレ回避を目的として、2015年2月にマイナス金利政策を導入した(2020年1月にマイナス金利を解除し、現在はゼロ金利)。
ゼロ金利が限界になった後の政策
中央銀行は、通常、政策金利の誘導目標を上下させることで金融調節を行っていますが、実質的にゼロ金利の状態になると金利の引き下げによる金融緩和は困難になります。
そのため、さらなる金融緩和を実施する場合は、貨幣量を目標とした「量的緩和政策」、将来の金融緩和を約束する「時間軸政策」、マイナス金利を導入する「マイナス金利政策」などを採用することになります。