量的・質的金融緩和(異次元緩和)
読み方: | りょうてきしつてききんゆうかんわ |
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英語: | Quantitative and Qualitative Monetary Easing |
分類: | 日銀 |
量的・質的金融緩和は、通称で「異次元緩和」、俗称で「黒田バズーカ砲」とも呼ばれ、日本銀行が2013年4月4日の政策委員会・金融政策決定会合において導入を決定した金融緩和策をいいます。従来とは、量・質ともに次元の違うものであり、FRBやECBなどの「量的金融緩和」とは区別されます。
※異次元緩和は、既に導入から9年超を経過しているが、未だに目標を達成できず、強化手法を増やしながら絶賛継続中。
目次:コンテンツ構成
- 量的・質的金融緩和の概要
- 量的・質的金融緩和の三つの波及経路
- 2013年の量的・質的金融緩和の決定
- 2014年の量的・質的金融緩和の決定
- 2016年の量的・質的金融緩和の決定
- 2018年の量的・質的金融緩和の決定
- 2019年の量的・質的金融緩和の決定
- 2020年も量的・質的金融緩和の決定
量的・質的金融緩和の概要
量的・質的金融緩和は、当初(2013年)、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するとしました。
そのために、マネタリーベースおよび長期国債・ETF等の保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買入れの平均残存期間を2倍以上に延長するなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行うものとなっていました。
一般に異次元緩和の狙いとして、金融機関や投資家に対して、リスクテイクを促すと共に、イールドカーブやリスクプレミアムへの働きかけを通じて、資産価格やポートフォリオ・リバランスに影響を及ぼすことを企図しています。
また、その実施に伴う措置として、資産買入等の基金の廃止(長期国債の買入れに吸収)、銀行券ルールの一時適用停止、市場参加者との対話の強化を行うこととしました。
量的・質的金融緩和の三つの波及経路
日本銀行では、量的・質的金融緩和において、以下の三つの波及経路(効果)で、目標達成を目指しています。
◎長期国債やETF・J-REITの買入れによって、イールドカーブ全体の金利の低下を促し、「資産価格のプレミアムに働きかける効果」。(資金調達コストの低下を通じて、企業や個人などの資金需要を喚起すると想定)
◎日本銀行が長期国債を大量に買い入れる結果として、これまで長期国債の運用を多く行ってきた投資家や金融機関が、株式・外債等のリスク資産へ運用をシフトさせたり、貸出を増やしていく「ポートフォリオ・リバランス効果」。
◎物価安定の目標の早期実現を明確に約束し、これを裏打ちする大規模な資産買入れを継続することによって、「市場や経済主体の期待を抜本的に転換する効果」。(予想物価上昇率が上昇すれば、現実の物価に影響するだけでなく、実質金利の低下を通じて民間需要を刺激することも期待)
2013年の量的・質的金融緩和の決定
当初、導入時の2013年4月4日の決定内容です。
マネタリーベース・コントロールの採用
◎量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場調節の操作目標を、無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベースに変更。
◎マネタリーベースが年間約60~70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う(2013年末:200兆円、2014年末:270兆円)。
長期国債買入れの拡大と年限長期化
◎イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。
◎長期国債の買入れ対象を40年債を含む全ゾーンの国債とした上で、買入れの平均残存期間を、現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長する。
ETF・J-REITの買入れの拡大
◎資産価格のプレミアムに働きかける観点から、ETFおよびJ-REITの保有残高が、それぞれ年間約1兆円、年間約300億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。
量的・質的金融緩和の継続
◎本緩和は、「2%の物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。
◎その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。
2014年の量的・質的金融緩和の決定
2014年10月31日の決定内容で、緩和の強化です。
マネタリーベース増加額の拡大
◎マネタリーベースが、年間約80兆円(約10~20兆円追加)に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。
資産買入れ額の拡大および長期国債買入れの平均残存年限の長期化
◎長期国債について、保有残高が年間約80兆円(約30兆円追加)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。(イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営。買入れの平均残存期間を7~10年程度に延長、最大3年程度延長)
◎ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円(3倍増)、年間約900億円(3倍増)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。新たにJPX日経400に連動するETFを買入れの対象に加える。
2016年の量的・質的金融緩和の決定
2016年の決定内容で、緩和の強化です。
1月29日:マイナス金利の導入
◎金融機関が保有する日本銀行当座預金に-0.1%のマイナス金利を適用する。今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。具体的には、日本銀行当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する。
7月29日:ETF買入れ額の増額
◎ETFについて、保有残高が年間約6兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う(現行の約3.3兆円からほぼ倍増)。
9月21日:長短金利操作付き量的・質的金融緩和の導入
◎長短金利操作付き量的・質的金融緩和は、金融市場調節によって長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」と、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の物価安定の目標を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」の二つの要素から成り立っている。
2018年の量的・質的金融緩和の決定
2018年7月31日の決定内容で、緩和の強化です。
政策金利のフォワードガイダンスの導入
◎強力な金融緩和を粘り強く続けていく観点から、政策金利のフォワードガイダンスを導入することにより、物価安定の目標の実現に対するコミットメントを強める。
長短金利操作付き量的・質的金融緩和の持続性を強化する措置
◎実務的な対応として、政策金利残高の見直しとETFの銘柄別の買入れ額の見直しを行う。
2019年の量的・質的金融緩和の決定
2019年4月25日の決定内容で、緩和の強化です。
政策金利のフォワードガイダンスの明確化
◎日本銀行は、海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも2020年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。
強力な金融緩和の継続に資する措置の実施
◎適格担保の拡充やETF貸付制度など諸措置を実施する。
2020年も量的・質的金融緩和の決定
2020年3月16日の決定内容で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を踏まえた緩和の大幅強化です。
ETF・J-REITの積極的な買入れ
◎ETFおよびJ-REITについて、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う。