普通預金と当座預金の違いは?
ビジネスシーンにおいて、お金のやりとりをする場合、「普通預金」か「当座預金」が使われます。
個人の方の場合、一部の個人事業主の方を除き、当座預金を開設することはありませんが、日常生活において、法人の振込先などで、当座預金という名称を目にすることもあるのではないでしょうか?
一般に普通預金と当座預金は、どちらも入金や出金、決済などで日常的に使われますが、その仕組みは大きく異なります。特に当座預金については、商取引の決済でよく使われるので、ビジネスの基本知識として知っておくとよいでしょう。
ここでは、「普通預金」と「当座預金」の違いについて、簡単にまとめてみました。
目次:コンテンツ構成
普通預金について
普通預金とは、期間の定めがなく、いつでも預け入れや引き出しが自由にできる、元本保証のある預金商品(預金口座)をいいます。これは、銀行や信用金庫、信用組合、労働金庫などに口座開設をすると、最初に作られる、取引の基本となる預金口座で、「個人向け」と「法人向け」の二つがあります。
具体的には、金融機関の窓口やATMなどで、お金の預け入れや引き出しが自由にでき、またクレジットカードや公共料金などの「自動引落」、給与や年金などの「自動振込」、株式の配当金や公社債の利子、投資信託の分配金などの「自動受取」といった機能があります。
なお、個人においては、普通預金の単体ではなく、「総合口座」にした場合、定期預金や公共債を担保に自動融資を受けることができます。
※ゆうちょ銀行で普通預金に該当するのは「通常貯金」、またJAバンクやJFマリンバンクで普通預金に該当するのは「普通貯金」。
普通預金の種類
普通預金には、有利息の「通常の普通預金」以外に、預金保険制度により全額保護される「無利息型普通預金」もあり、(1)無利息、(2)要求払い(随時払い戻しができること)、(3)決済サービス(口座振替等)が提供可能なこと、といった3要件を満たす「決済用預金」となっています。
・通常の普通預金:預金保険制度でペイオフの対象
・無利息型普通預金:預金保険制度で全額保護
なお、無利息型普通預金(決済用普通預金)の作成にあたっては、新規に作成することもできますし、また既存の普通預金口座から「普通預金に関する無利息特約」を付けることで口座番号を変えずに移行することもできます。
普通預金の主な特徴
普通預金の主な特徴として、以下が挙げられます。
・預金保険の対象で、元本保証がある金融商品である
・個人や企業などが利用する基本となる預金口座である
・キャッシュカードが発行され、ATMやCDで入出金ができる
・預け入れは1円以上1円単位で満期はない
・お金の出し入れは自由で、流動性が高い
・自動支払いや自動受け取りの機能がある
・通常の普通預金は、利息は付くが、金利は低めに設定されている
・無利息型普通預金は、金利は付かないが預金保険で全額保護されている
当座預金について
当座預金とは、企業等の法人や個人事業主が利用する、当座取引契約に基づく、手形や小切手の支払いに使われる預金口座をいいます。これは、決済用預金の一つで、法律(臨時金利調整法)により利息を付けることが禁止されていますが、一方で金融機関が破綻しても、預金保険制度によって全額保護される仕組みになっています。
|手形|
約束手形と為替手形の総称で、一定の金額の支払いを目的とした有価証券。原則として、支払期日にならならないと現金化することができないため、振出人は支払期日まで支払いを猶予することができる。
|小切手|
一定の金額を支払うことを金融機関に委託する有価証券。振出人が記載された金額を支払うことを約束した証書で、受取人は小切手を呈示することにより、現金の支払いが受けられる。
当座預金の口座開設
当座預金は、手形や小切手による信用決済取引のため、口座開設後に、不渡りが出ると大きな問題になるため、口座開設をする際には、取引を申し込む金融機関の店舗で所定の審査があります。
そして、この審査に通り、当座勘定取引契約を結ぶことで、口座が開設され、その際には、所定の口座開設手数料がかかります。
当座預金の入金と出金
当座預金は、普通預金と比べて、入金(預入方法)や出金(払戻方法)において、大きく異なっています。そのため、利用するにあたっては、その仕組みをよく理解しておく必要があります。
現在、入金については、当座預金は、当座預金入金帳またはキャッシュカード(ないところもあり)で、随時、預け入れができます。また、出金については、当座預金は、手形や小切手、口座振替、キャッシュカード(ないところもあり)で、随時、払い戻しができます。
なお、法人向けインターネットバンキングでは、当座預金と普通預金等の他の預金の間で、振り替えができるサービスを提供しているところもあります。
当座預金の当座貸越
当座貸越(一般当座貸越)は、当座預金のオプションサービスではなく、当座預金の開設者が、当座預金の残高を越えて振り出した手形や小切手の決済不足資金を、金融機関が一定の貸越極度額まで立替払いを行う融資形態です。
これに関しては、当座預金の開設者が当座貸越の申込を行い、その可否を判断する与信審査に通った場合に、当座勘定貸越約定書を締結して行われます。
一般に当座貸越の仕組みとして、当座預金と連動し、その残高が不足した場合に自動的に融資となり、顧客にとっては、当座預金の一時的な資金不足に対応できるというメリットがあります。
当座預金の主な特徴
当座預金の主な特徴として、以下が挙げられます。
・預金保険制度により全額保護される決済用預金である
・企業や個人事業主が業務上の支払いに利用する預金口座である
・現金の代わりに支払われた手形や小切手の決済をするために利用する
・元本保証があり、利息は一切付かない
・預け入れは1円以上1円単位で満期はない
・公共料金等の自動支払いや株式配当金等の自動受取といった機能がある
・口座開設の際に事前の審査があり、開設できないこともある
・不渡りを出すと、経営面で大変なことになる
普通預金と当座預金の違いについて
昨今では、決済面で振込が多くなっており、またネットバンキングの利用で普通預金の利便性が高まっていますが、一方で当座預金ならではの利便性もあり、多くの企業では用途により口座を使い分けています。ここでは、「普通預金」と「当座預金」の違いについてまとめてみました。
口座開設の違い
普通預金は、基本的に誰でも開設できるのに対して、当座預金は、所定の審査があり、高い信用がないと開設できない。
入金と出金の違い
普通預金は、キャッシュカードで、ATMを利用して、入金や出金が簡単にできる。これに対して、当座預金は、キャッシュカードが発行されない場合、ATMを利用して入金や出金ができず、この場合、出金(引き出し)は小切手や手形、口座振替によって行われ、また入金の際には当座預金入金帳が必要となる。
通帳の違い
普通預金は、無通帳型を除き、通帳が発行されるのに対して、当座預金は、通帳がなく、その代わりに当座勘定照合表が郵送される。また、昨今では、インターネットを利用して、リアルタイムで当座預金の取引状況を確認できる金融機関が多い。
利息の違い
通常の普通預金は、利息が付くのに対して、当座預金は、利息が付かない。なお、決済用預金である「無利息型普通預金」は、当座預金と同様、利息が付かない。
預金保険の違い
金融機関の破綻の際に、通常の普通預金はペイオフが適用され、一つの金融機関あたり1,000万円までしか保護されないのに対して、当座預金は決済用預金に該当し、全額が保護される。なお、無利息型普通預金は、当座預金と同様、決済用預金に該当し、全額が保護される。
融資機能の違い
普通預金は、個人の場合、総合口座にして、定期預金等をセットすると自動融資が受けられるが、法人の場合は、総合口座がないので、自動融資の機能はない。これに対して、当座預金は、与信審査を受けて、当座貸越契約を締結すると、当座貸越(融資)を受けられる。