当座預金

当座預金は、当座取引契約に基づく、手形や小切手の支払いに使われる預金をいいます。これは、預金保険法が定める「無利息、要求払い(随時払い戻しができること)、決済サービス(口座振替等)が提供可能なこと」という3要件を満たすため、「決済用預金」の一つに該当し、現在、預金保険制度で全額保護の対象となります。

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当座預金の活用

当座預金は、主に企業や個人事業主が業務上(営業資金等)の支払いに利用する無利息の預金(決済用預金)で、現金の代わりに「手形」や「小切手」で支払いをする際に活用します。

また、普通預金のように通帳はなく、その代わりに「当座勘定照合表」が金融機関から郵送されてきます。なお、金融機関によっては、インターネットバンキングで取引内容を随時確認できるところもあります。

当座預金の主な特徴

当座預金は、普通預金や定期預金などの口座とは異なり、誰でも簡単に開設できるものではなく、以下のような特徴があります。

・預金保険制度により全額保護される決済用預金
・企業や個人事業主が業務上の支払いに利用する預金口座
・現金の代わりに支払われた手形や小切手の決済をするために利用
・元本保証があり、利息は一切付かない
・預け入れは1円以上1円単位で満期はない
・公共料金等の自動支払や株式配当金等の自動受取といった機能がある
・口座開設の際に事前の審査があり、開設できないこともある
・不渡りを出すと大変なことになる

当座預金の口座種類

当座預金は、現在、営業資金等の支払いに利用する「一般当座用」がほとんどですが、一部の金融機関では、それ以外に「個人当座用」や「専用約束手形口用」が、まだ商品として提供されているところもあります。

・一般当座用:営業資金等の支払い
・個人当座用:個人資金等の支払い
・専用約束手形口用(マル専当座):割賦販売等の支払い

当座預金の口座開設時の審査

当座預金は、手形や小切手による信用決済取引のため、口座開設後に「不渡り」が出ると大きな問題になるため、口座開設をする際には、取引を申し込む金融機関の店舗で所定の審査があります(支店長決裁)。また、この審査に通り、当座勘定取引契約を結ぶことで口座が開設され、その際には、口座開設手数料がかかります。

一般に当座預金の口座開設の審査内容については、金融機関によって若干異なりますが、具体的には、以下のような項目がチェックされることが多いです。

・会社の実態(登記簿謄本、印鑑証明書等)
・過去の預金取引等の実績
・過去の不渡り事故の有無
・事業内容や事業状況
・会社決算(売上や利益など)
・手形取引の必要性
・代表者の経歴や信用力(中小企業の場合)

なお、口座開設後は、小切手についてはすぐに発行できますが、手形については取引実績をある程度積まないと発行できないこともあります。

※不渡り:支払呈示がなされた手形や小切手が、支払金融機関によって支払いを拒絶されること。

当座預金の口座開設後の契約関係

当座預金は、日常的な商取引において、営業資金等の支払いに便利ですが、一方で日々の決済面については、間違っても「不渡り」を出さないように細心の注意を払う必要があります。そのためには、契約関係について、最低限理解しておく必要があります。

|当座勘定取引契約

当座勘定取引契約は、「手形と小切手の支払委託に関する契約」と「当座預金に関する契約」から構成されており、金融機関に当座預金を申込んで、所定の審査に通ると契約が成立します。

|当座勘定規定

当座預金の取引にあたっては、企業等の実務担当者は、金融機関が交付する「当座勘定規定」をよく理解しておくことが必要です。なお、当座勘定とは、金融機関が当座取引を処理するための勘定をいいます。

当座預金の手形と小切手

当座預金は、日々の商取引において、現金通貨を用いないで、当座預金口座を使用し、手形や小切手により代金を決済できるため、通貨としての機能を有する典型的な「預金通貨」と言われます。現在、法人等による決済口座としての使用がほとんどで、当座預金を日常的に利用するにあたっては、手形と小切手の基本知識をしっかりと理解しておくことが必要です。

なお、日本の銀行等の金融機関では、全国銀行協会が規格・様式を定めた「統一手形用紙」と「統一小切手用紙」を所定の手数料で交付しています(予め支払地や金融機関名などは印字されている)。

|手形

手形とは、「約束手形」と「為替手形」の総称で、一定の金額の支払いを目的とした有価証券をいいます。すぐに現金化できる小切手とは異なり、原則として支払期日にならならないと現金化することができないため、振出人は支払期日まで支払いを猶予することができます。

|小切手

小切手とは、一定の金額を支払うことを金融機関に委託する有価証券をいいます。振出人が記載された金額を支払うことを約束した証書(支払証券)で、受取人は小切手を呈示することにより、現金の支払いを受けられます。

当座預金の入金と出金

当座預金は、決済性預金である「普通預金」と比べて、入金(預入方法)や出金(払戻方法)において、大きく異なっています。そのため、利用するにあたっては、その仕組みをよく理解しておく必要があります。

|預入方法

当座預金は、当座預金入金帳またはキャッシュカード(ないところもあり)で、随時、預け入れができます。

|払戻方法

当座預金は、手形や小切手、口座振替、キャッシュカード(ないところもあり)で、随時、払い戻しができます。なお、キャッシュカードによる払戻し等にあたっては、キャッシュカード規定に定める手数料がかかります。

※法人向けインターネットバンキングでは、当座預金と他の預金(普通預金等)の間で「振り替え」ができるサービスを提供しているところもある。

当座預金の当座貸越

当座貸越は、当座預金のオプションサービスではなく、当座預金の開設者(顧客)が当座預金の残高を越えて振り出した手形や小切手の決済不足資金を、金融機関が一定の貸越極度額まで立替払いを行う融資形態です。

これに関しては、顧客が信用力を判断する与信審査に通った場合に、当座勘定貸越約定書を締結して行われるもので、具体的には、当座預金と連動し、その残高が不足した場合に自動的に貸越(融資)となり、顧客にとっては、当座預金の一時的な資金不足に対応できるメリットがあります。

当座預金の簿記勘定科目

当座預金は、企業等の簿記勘定科目では、金融機関の当座勘定取引契約に基づく、当座預金を処理するための資産勘定をいいます。これは、貸借対照表(B/S)においては、「資産の部」の「流動資産」の「現金預金」に計上され、また日常的な経理(仕訳)では、当座預金から手形や小切手で支払った場合や、当座預金に預け入れた場合に計上します。

なお、当座貸越は、簿記勘定科目では、当座預金とは別のもの(借入金の一種)であり、負債勘定の一つとなっています。

当座預金の基本事項

当座預金は、日常の商取引において、手形や小切手で支払いを行う際の「決済用口座」として活用します。日々、口座を管理するにあたっては、手形や小切手の振り出し状況を常に把握し、また残高確認をしっかりと行い、決済時に残高不足となって「不渡り」とならないように細心の注意を払うことが必要です。

取扱機関 銀行、信金、信組、労金など
リターン なし(無利息、決済機能を提供)
リスク なし(全額保護、不渡りに注意)
預入金額 1円以上1円単位
預入期間 無期限、いつでも出し入れ自由
利払い 無利息
税金
保護制度 預金保険制度の対象
手数料 ・当座預金口座開設手数料
・小切手用紙発行手数料、手形用紙発行手数料 他
備考 ・経理は当座預金出納帳で管理
・公共料金の自動引落や借入金の返済等にも対応
・当座貸越契約を結べば、一定限度まで自動融資

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