短期金利と長期金利の違いは?
マーケット動向を見る上で、株式(株価指数)や外国為替(為替レート)、コモディティ(金、原油)などの指標と共に、金利(短期金利、長期金利)の指標も注目されます。
一般に短期金利も長期金利も、日々大きく動くことはありませんが、一方で大きく動いた場合は、住宅購入や設備投資、個人消費、財政、資金調達、株価、為替レートなど、経済全般に大きな影響を与えることがあるので注意が必要です。
ここでは、短期金利と長期金利の違いについて、簡単にまとめてみました。
目次:コンテンツ構成
短期金利について
短期金利とは、取引期間が1年未満の資金を貸し借りする際の金利をいいます。これは、コール、レポ、現先、短期国債、コマーシャルペーパー(CP)、譲渡性預金(CD)、預貯金、ローンなど、償還期限が1年未満(数日から数カ月程度)の資産(債権)や負債(債務)の金融資産に適用される金利全般を指します。
また、ニュースや新聞などで「短期金利」と言った場合は、インターバンク市場やオープン市場の「短期金融市場」で金利水準が形成される、コールレートやレポレート、国庫短期証券利回り、TIBOR、TORFなどを指します。現在、これらの金利の中で「無担保コール翌日物レート」が代表的な短期金利の指標となっています。
短期金利の「政策金利」
短期金利は、中央銀行が金融市場(マーケット)での金融調節によって、金利水準をコントロールすることが可能であることから、世界中の多くの国・地域において、「政策金利」と呼ばれる特定の短期金利が、中央銀行が行う金融政策の操作目標となっています。
政策金利とは、金融市場の金利を実体経済に見合った水準に誘導するために、中央銀行が定める基準金利です。また、政策金利は、短期金融市場のインターバンク市場の操作金利でもあり、通常、これを操作(上下)することで、インターバンク市場からオープン市場に波及します。
現在、世界で一番注目される政策金利は、米国の「Federal Funds Rate」です。また、日本については、金利の正常時はインターバンク市場の「無担保コール翌日物レート」ですが、量的・質的金融緩和などの緊急時は違う指標となります。
短期金利の個人への影響
短期金融市場(マーケット)の短期金利が大きく変動した場合、個人の運用面では、普通預金や1年未満の定期預金の金利、10年変動の個人向け国債の金利などが動くことがあります。また、個人の借入面では、変動金利型の住宅ローンや教育ローンなどの金利が動くことがあります。
長期金利について
長期金利は、期間が1年以上の資金の貸し借りをする場合に適用される金利の総称をいいます。
広義には、国債や地方債、社債、預貯金、ローンなど、償還期限が1年以上の資産(債権)や負債(債務)の金融資産に適用される金利全般を指し、一方で狭義には、長期金融市場で注目される「指標金利」を指し、時系列や国際的に長期金利を比較する際に用いられます。
現在、日本の長期金融市場では、長期金利の種類として、各年限の国債利回りや金利スワップレートなどがあり、その中で「新発10年国債利回り(新規に発行された償還期間10年の国債の流通利回り)」が代表的な指標金利となっています。
長期金利の「経済の体温計」
長期金利は、短期金利の影響も受けながら、景気やインフレ動向に関する各種予測を反映した長期資金の需給により、長期金融市場(マーケット)で日々決定されています。
理論的には、市場参加者の将来(中長期)の「実質経済成長率の予測」、「物価上昇率の予測」、国債の需給悪化など「将来の懸念材料に対する上乗せ分(リスクプレミアム)」の三要素で決まるとされ、「経済の体温計」にたとえられます。これに関しては、景気が良く物価が上昇する局面では、長期金利は上昇するのに対して、景気が悪く物価が下落する局面では、長期金利は低下します。
<長期金利は経済の体温計>
・景気が良く物価が上昇する局面:長期金利は上昇する
・景気が悪く物価が下落する局面:長期金利は低下する
長期金利の個人への影響
長期金融市場(マーケット)の長期金利が大きく変動した場合、個人の運用面では、1年以上の定期預金、3年固定や5年固定の個人向け国債、個人向け社債などの金利が動くことがあります。また、個人の借入面では、固定金利選択型や全期間固定型の住宅ローンなどの金利が動くことがあります。
短期金利と長期金利の関係について
短期金利と長期金利の関係を簡単にまとめると、以下のようになります。
◎短期金利と長期金利は、分断されたものではなく、全体で金利状況を表している。具体的には、縦軸を利回り、横軸を期間として、期間に対応する利回りをプロットしてゆき、その点をつなぎ合わせて描かれる「イールドカーブ(利回り曲線)」を形成する。
◎イールドカーブは、通常、長期金利が短期金利を上回ることが多く、そのカーブが右上がりの曲線となる。
・順イールド:曲線は右上がり(短期金利<長期金利)
・逆イールド:曲線は右下がり(短期金利>長期金利)
◎長期金利は、短期金利の影響も受けながら、景気やインフレ動向に関する各種予測を反映した長期資金の需給によりマーケットで決定される。
短期金利と長期金利の違いについて
短期金利と長期金利の違いを簡単にまとめると、以下のようになります。
◎短期金利は、短期金融市場の動向を反映した、期間が1年未満の金融取引に適用される金利の総称なのに対して、長期金利は、長期金融市場の動向を反映した、期間が1年以上の金融取引に適用される金利の総称となっている。
◎短期金利は、中央銀行の金融政策(政策金利)に影響されるのに対して、長期金利は、市場の需給関係や将来の予測(経済動向・物価動向・金融政策等の見通し)などに影響される。それゆえ、長期金利は、短期金利に比べて、コントロールが難しい。
◎短期金利は、各国で取引内容が異なるが、長期金利は、どこの国も国債市場がベースとなっている。また、世界の国債市場は、多くの市場参加者が取引して連動する傾向があるため、長期金利は、海外金利(特に米国の長期金利)の影響を受けやすい。