外国為替レートの決定理論
外国為替レートには、株価や債券価格のように、合理的かつ包括的な価格の決定理論がありません。現実の外国為替市場では、2つの通貨の相対的な需給関係以外に、常に基軸通貨である米ドルに影響されるため、その価格の根拠は非常に複雑になっています。
一般に為替レートについて、唯一確かなのは、「現状のレートこそが、市場の合意で作られたものであり、妥当である」ということです。とはいえ、為替レートの妥当性を考える上で、過去から現在まで、様々な理論が考えられてきており、以下では、代表的なものを2つほどご紹介します。
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為替レートの購買力平価説について
購買力平価とは、金本位時代の1921年に、スウェーデンの経済学者カッセルが提唱した古典的な為替レートの決定理論です。この理論では、全く同じ商品やサービスを購入する場合、通貨単位は異なっても、同じ価値を持つという視点から、為替レートの適正水準を割り出すというものです。
一般に購買力平価は、短期や中期の為替レートの説明には全く役立ちませんが、長期的(10年以上)には、マーケット(市場)で形成される為替レートは徐々に購買力平価に収斂されると考えられています。そのため、現在も、為替レートの決定理論の中で、最も引用されるものの一つとなっています。
なお、購買力平価説には、絶対的購買力平価と相対的購買力平価の2つがあり、現在は「相対的購買力平価」が主流です(OECDも相対的購買力平価に基づいたレートを発表)。
|絶対的購買力平価|
同じ商品の価格が2つの国で一致するように為替レートが決定。
|相対的購買力平価|
2つの国の物価水準の変化を反映して為替レートが決定。
為替レートのアセット・アプローチについて
アセット・アプローチとは、外国為替市場において、短期の資本取引が支配的であるため、「為替レートが金融資産(アセット)に対する需要と供給が均衡するように決まる」という近代的な為替レートの決定理論です。
一般に本理論では、投資家は国内外の各種市場を見て、国内の金融資産と海外の金融資産の組み入れを行って最適なポートフォリオを構築し、この保有比率によって、自然に為替レートが決定するとしています。すなわち、金融資産の需給関係をもとに、短期の資本移動に注目した考え方となっています。
<近代的な為替レートのその他の決定理論>
マネタリー・アプローチ、マンデル=フレミング理論(MF理論)