住民税とは何か?

日本において、個人の所得に対して、国が課税する税金(国税)が「所得税」なのに対して、市区町村と都道府県が課税する税金(地方税)が「市町村民税」と「道府県民税」で、この二つを合わせて「住民税」といいます。ここでは、日常生活の中で身近な「住民税」について、簡単にまとめてみました。

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住民税の概要

住民税とは、市町村および都道府県が、その区域内に住所や事務所などを有する、個人および法人に課す税金をいいます。これは、「市町村民税」と「道府県民税」の総称で、また個人か法人かによって、「個人住民税」と「法人住民税」の二つがあります。なお、東京都の場合は、都が課すのは「都民税」、特別区(23区)が課すのは「特別区民税」と称されています。

住民税の呼称

住民税は、「市町村民税」と「道府県民税」の総称ですが、実際の住所地での呼び名は、各地域で異なるのでご注意ください。

<呼称の例>

・東京都北区:特別区民税・都民税
・北海道野付郡別海町:町民税・道民税
・大阪府大阪市:市民税・府民税
・神奈川県愛甲郡清川村:村民税・県民税

東京23区の住民税

東京都の特別区(23区)内については、地方自治法により特別の地位が与えられており、特別区内に住所のある個人が納める住民税は、道府県民税に相当する税は「都民税」として、また市町村民税に相当する税は「特別区民税」として課税されます。

※東京都の23区外は、都民税と市町村民税が課税される。

住民税の位置づけと納税義務者

住民税は、所得税と共に、一生涯支払う租税(税金)で、現在、その位置づけと納税義務者は、以下のようになっています。

住民税の位置づけ

日常生活の中で、教育や福祉、消防・救急、ゴミ処理など、私たちの生活に身近な行政サービスの多くは、市区町村や都道府県によって提供されています。

このような状況に対して、住民税は、行政サービスの提供で発生する地域社会の費用を、その地域に住む住民に、その能力に応じて、広く分担してもらおうという「地域社会の会費的な性格を有する税」となっています。

また、住民税は、国の税金(国税)である「所得税」と同じく、所得に対して課される税金で、地方公共団体に納める地方税となっています。

住民税の納税義務者

道府県内または市町村内に住所がある者は、住民税の均等割および所得割の「納税義務者(租税を納付する義務を負担する者)」となります。一方で、道府県内または市町村内に事務所・事業所または家屋はあるものの住所がない者は、均等割だけの「納税義務者」となります。

なお、個人の場合、収入面によっては、所得割・均等割のいずれか一方を負担するだけでよい場合があるほか、生活保護など社会福祉の観点から全て非課税となる場合もあります。

住民税の種類

個人住民税は、均等割、所得割、利子割、配当割、株式等譲渡所得割の5つから構成されています。

・均等割:所得金額にかかわらず定額で課税
・所得割:前年の所得金額に応じて課税
・利子割:預貯金の利子等に課税
・配当割:一定の上場株式等の配当に課税
・株式等譲渡所得割:源泉徴収口座内の株式等の譲渡に課税

現在、個人住民税の中で、均等割と所得割については、一定以上の収入がある場合、支払う必要があるのに対して、利子割と配当割については、預貯金の利子や上場企業の配当を受け取る場合、金融機関等が天引きして納付します。

また、株式等譲渡所得割については、源泉徴収選択口座内の上場株式等の譲渡所得等に課税され、金融機関等が天引きして納付します。

住民税の仕組み

毎年、働いて給与を得たり、年金を受け取ったりして、一定以上の収入がある場合にかかる「個人住民税」の仕組みについて、簡単に説明したいと思います。

何が課されるか?

個人住民税では、一定以上の収入がある場合、非課税限度額を上回る人に定額の負担を求める「均等割」と、一律10%で納税義務者の所得金額に応じた税額の負担を求める「所得割」の二つが課されます。

個人住民税=均等割+所得割

どこが税額を計算し、通知を行っているか?

個人住民税では、地方自治体が、勤務先から提出された給与支払報告書や、国からの所得税の確定申告書の収入情報に基づいて、毎年、住民税額を計算し、納税者へ通知しています。また、個人住民税の徴収事務については、市町村民税と併せて、道府県民税の徴収も、市町村が行っています。

どこに支払うか?

個人住民税は、その年の1月1日に住んでいた市町村で課税されます。したがって、年の途中で、他の市町村に引っ越しても、その年の個人住民税は、1月1日に住んでいた市町村に納めることになります。

どのように納付するか?(特別徴収と普通徴収)

個人住民税の納付方法には、「特別徴収」と「普通徴収」の2つがあります。

●特別徴収

特別徴収とは、会社員や公務員などの給与所得者の方を対象とした納税方法で、市町村から「特別徴収税額通知書」により、給与の支払者を通じて、12カ月分の税額が本人に通知される。一方で、給与の支払者は、通知された税額を6月から翌年5月まで、毎月の給与から天引きして納付する。

※特別徴収については、その他に、公的年金からの特別徴収もある。

●普通徴収

普通徴収とは、事業所得者など、給与から住民税を差し引くことができない方を対象とした納税方法で、市町村から送付される納付書で住民税を納める。これに関しては、納付は年4回で、全期一括納付や口座振替も可能となっている。また、税額決定・納税通知書および納付書は、毎年6月頃に発送される。

所得税とどこが一番違うか

個人住民税は、所得税と同じく、収入に対して支払う税金で、また計算方法も似ていますが、一番の大きな違いは「支払う時期」です。

◎会社員や公務員などで、源泉徴収される「特別徴収」の場合、毎月、所得税は当年度分を支払っているのに対して、住民税は1-5月は前々年度分、6-12月は前年度分を支払っている。

◎「普通徴収」の場合、自営業や副業などを行う、納税義務者自らが、毎年、2月16日から3月15日までの1カ月間に所得税の確定申告を行って、申告時に「住民税を自分で納付」を選択する。これによって、毎年、6月頃に納税通知書と納付書が送られてくるので、年4回、もしくは一括納付で、住民税を納める。

住民税の計算方法

個人住民税は、前年の1年間(1/1-12/31)の給与や公的年金、事業収入、家賃収入などの個人の収入(所得)に対して課される税金です。これは、市町村民税と道府県民税から構成され、それぞれ所得に応じて負担する「所得割」と、一定額を均等に負担する「均等割」があり、この4つを合算したものが納付税額となります。

個人住民税=市町村民税 (所得割+均等割) +道府県民税 (所得割+均等割)

基本的には、住民税の計算方法は、所得税の計算方法と同じですが、一方で大きな違いは、下記のステップ5にある「均等割額」で、この概念は所得税にはありません。

1.所得金額=収入金額-必要経費
2.課税標準額=所得金額(合計)-所得控除額
3.算出所得割額=課税標準額×税率
4.所得割額=算出所得割額-税額控除
5.納付税額=所得割額+均等割額

1.所得金額=収入金額-必要経費

ステップ1では、収入金額から必要経費を差し引いて「所得金額」を求めます。

現在、所得の種類には、給与所得、事業所得、利子所得、配当所得、不動産所得、譲渡所得、退職所得、山林所得、一時所得、雑所得の10種類があります。一方で、必要経費については、それぞれの所得で規定されており、多くの方に身近な給与収入の場合は「給与所得控除」、年金収入の場合は「公的年金等控除」となります。

 所得金額=収入金額-必要経費

例えば、給与所得者の方の所得金額は、給与収入から給与所得控除を差し引いた金額となります。

所得金額(給与所得)=給与収入(年収)-給与所得控除

このステップ1で算出される「所得金額」とは、簡単に言ってしまえば、1年間に得た利益(儲け)のようなもので、これが複数あれば合算します。

2.課税標準額=所得金額(合計)-所得控除額

ステップ2では、ステップ1で求めた所得金額(合計)から所得控除額を差し引いて、課税標準額(課税所得金額)を求めます。

現在、所得控除の種類には、雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除の14種類があります。

 課税標準額=所得金額(合計)-所得控除額

一般に課税標準額は、結婚している、扶養する子どもがいる、保険に加入している、その年に医療費がたくさんかかったなど、納税する人の個人的事情を考慮して算出されるものです。なので、所得割の税率を乗じる対象となる金額である、この課税標準額が小さくなると、税金が安くなります。

3.算出所得割額=課税標準額×税率

ステップ3では、ステップ2で求めた課税標準額に税率を掛けて、算出所得割額を求めます。

 算出所得割額=課税標準額×税率

現在、所得割の税率は、市町村民税と道府県民税を合わせて、所得に対して一律10%とされています。具体的には、標準税率で、市町村民税が6%、道府県民税が4%とされていますが、一方で指定都市では、市民税が8%、道府県民税が2%となっており、異なっています。

※指定都市:政令で指定された人口が多い都市のことで、例えば、大阪市、名古屋市、京都市、横浜市、神戸市、北九州市、札幌市などが挙げられる。

4.所得割額=算出所得割額-税額控除

ステップ4では、ステップ3で求めた算出所得割額から税額控除を差し引いて、住民税の所得割額を求めます。

 所得割額=算出所得割額-税額控除

現在、税額控除には、調整控除、住宅借入金等特別税額控除、寄附金税額控除、配当控除、配当割額・株式等譲渡所得割額控除、外国税額控除があり、調整控除以外は、適用にあたって何らかの申告が必要となります。

5.納付税額=所得割額+均等割額

ステップ5では、ステップ4で求めた所得割額に、均等割額を足したものが、「住民税の納付税額」となります。

 住民税の納付税額=所得割額+均等割額

現在、住民税の均等割は、地域社会の費用の一部を、広く均等に、住民の方に負担してもらうという趣旨で設けられています。

◎均等割の標準税率は、通常は、市町村民税3,000円、道府県民税1,000円で、合計で年額4,000円となっている。

◎標準税率よりも高い税率で税金を課すことができる「超過課税」を実施している地方自治体に住んでいる場合は、均等割が標準税率よりも若干高くなっている。

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